第56章 七海の奪還
補佐官はそれを聞いて大きくため息をついた。
「奥脇七海は重大な違反をした為、奥脇統括が自ら出頭を命じたそうだ。一時的な拘束の後、しっかり反省を促した上での解放と聞いている。
それで命の危機に陥るとは到底思えないが?」
「…では、あなたは七海さんが無事であることを自ら確認をしているのですね?」
補佐官は眉を顰めてレンを見た。
「…奥脇七海は君のせいで拘束されていると聞いている。よくも臆面なく尋ねられるものだな。恥ずかしくはないのかね?」
これを聞いて、レンは補佐官を見限った。
この人は、通り一辺倒のことしか聞かず、また確かめようともしないのだと。
「何を恥ずかしがれと?黙って殺されるのが正しいとでも言いたいんですか?」
レンは呆れた風に言い放つ。
「何の話だ。」
補佐官は不愉快そうに怒りを滲ませて問い返すが、レンはもう聞く耳を持たなかった。
「知らないのなら、勝手に探すまでです。
瀬戸さん、そちらは任せていいですか?」
「お前な…。まぁいい、こっちは任せとけ。七海を探して来てくれ。」
「わかりました。」
レンは答えるや否や駆け出した。
「空斗!お前、正気か?ここは警察じゃない。五稜郭だぞ?そんな勝手が許されると思っているのか!」
補佐官は責め立てるが、瀬戸は意に介さない。
「俺は正気だ。どっちが常軌を逸しているのか、これを見てから判断してくれよ。」
そう言ってROMを渡す。
「何だこれは。」
「とある審神者の遺書さ。所謂ビデオレターってやつだ。今見てくれるよな?」
瀬戸は強い視線で補佐官を見る。
「叔父さんは、”時の政府の補佐官”なんだろ?ならあんたには審神者の最期の声を聞く義務がある。」
補佐官はROMと瀬戸を見比べた後、小さくため息をついた。