第56章 七海の奪還
――翌日――
瀬戸は、叔父である瀬戸補佐官の元を訪ねる為、レンを連れて五稜郭へと赴く。
「取次をお願いします。」
「困ります。いくら御親族の方であっても、事前に御連絡頂かなくては…」
「親父から叔父さんには連絡いってるって話だったんだがな。それともこの話は隠蔽するつもりか?」
瀬戸は、眼光鋭く睨みつけるように見ながら、冷たく言い放つ。
受付らしい女性は、ちらりとレンを一瞥してから瀬戸を見る。
「…何のお話か分かりかねます。それは脅しでしょうか?」
「いや、これは警告だ。そちらがその気なら…」
「その気ならどうする?」
瀬戸の言葉を遮るように、中から瀬戸補佐官が出て来た。
「令状を持って出直します。本来警察が出張ってもいい案件だ。叔父さんじゃなかったら、態々面会になんて来ないさ。」
瀬戸は挑発するように、補佐官を見る。
「…やれやれ。お前は海斗よりは落ち着いてると思っていたんだがな。」
まるで他人事のように話す補佐官に瀬戸は眉を顰めた。
「…人の命がかかってるんで。」
「…まるで死人が出るような口振りだな。不確実な情報で騒ぎ立てる気か?」
瀬戸の言葉を受けて、補佐官も眉を顰める。
「ならお聞きします。七海さんはどこですか?」
会話に割り込んだレンを見て、補佐官は渋面を作った。
彼女に直接乗り込まれて脅しをかけられたのは記憶に新しい。
「…空斗、何故その人と一緒にいるんだね。」
「こいつには、今仕事を手伝ってもらってるんだ。俺も叔父さんに聞きたいね。七海の安全の確保を親父から頼んだ筈だよな。七海は今どこにいる?」
瀬戸は怒りを滲ませながら静かに問う。