第54章 政府の企み ーその2ー
――数日後――
『これは、話が違いますよねぇ…。』
『この前の映像とまるで意味が違ってきますよね。』
『しかし、いくら人を守るためとはいえ、負傷させるのは如何なものでしょうか?』
『いや、迅速な対応と言えるんじゃないですか?先に発砲しているのは明らかに押しかけてきた方でしょう?』
『それよりも攻撃方法が魔法みたいですよね?超能力ってやつですか?』
テレビでは、七海を守った時の加工前の映像が流され、あれだけ批判を繰り返していたコメンテーター達が言葉を濁していた。
「情勢がひっくり返ったな。」
「ちょっとだけ、すっとしたね。」
レン達の部屋には、ほぼ全員が集まっていた。
押し合うように小さなテレビを囲んでは、色々な番組でとくダネと化している自分達の話題に見入っている。
瀬戸は、手に入れた映像と内部情報を、とある報道社に売り込んだ。
独占スクープといった形で出すことで、徐々に口コミで回るように仕向けたのだ。
口コミというのは意外と馬鹿には出来ない。それは、時にメディアで流布するよりも、ずっと深く広く広がることがあるからだ。
別のサイトからも、匿名で動画を掲載したのも功を奏した。
独占スクープは瞬く間に拡散され、数日中には全国で報道されるまでに発展した。
「どうよ。俺の狙い通りってやつよ。」
得意気に言う瀬戸の隣で、レンはげんなりとする。
どちらにせよ、槍玉に上げられていることには変わらない、とレンは思う。
目立っているこの現状こそが、落ち着かないのだ。これを何千、何万の人が見ていると思うと、居た堪れない気持ちでいっぱいだ。
目立たずひっそりと、を常に念頭において生きてきた身から言わせてもらえば、もうテレビに映すのはやめてくれ、と訴えたい。