第54章 政府の企み ーその2ー
「重罪って程じゃないが、高額な賠償金請求は有り得るだろうな。」
「親切心だけで普通ここまで出来ます?見ず知らずの私に。」
レンは怪訝な様子で尋ねる。
それを見て、新田は困ったように笑った。
「まぁ、丸っきりお前の為だけじゃない。
俺は佐々木のダチでな。よくお前とその付喪神のことを気にしてたんだよ。
出来れば力になってやってくれ、って言われてたんだ。俺も見てて腹に据えかねるものがあったしな。」
「あー…、佐々木って…?」
レンは心配してもらうような知り合いはいない。
誰だ、それは。
だが、それを聞いて新田はジト目でレンを見た。
「洋服店の店長って言ったらわかるか?」
それを聞いて、レンの中で漸く合点がいく。
「あぁ…。気にかけてもらっていたとは思わなくて。すみません、ありがとうございます。」
「…ったく。薄情な奴だな。」
新田はやれやれとため息をついた。
「今度お礼に行きますよ。こんな大きな贈り物を貰ったんでね。」
レンはROMを少し持ち上げて見せた。
「そうだな。その方があいつも喜ぶだろうよ。」
新田はにかっと笑って答える。
「じゃあ、私急ぐんで。」
そう言うと、その場で簡易転移装置を起動させる。
「え?ここで!?」
新田の叫びも虚しく、レンは光の粒子となって消えていった。
後にポツンと残った新田はため息をつく。
「…しゃーねぇ。消しとくか。」
新田は部屋に設置されている監視カメラの隠蔽と警備員の口止めに取り掛かった。