第54章 政府の企み ーその2ー
「は〜。いいもの見たわ。」
新田はご満悦で言い、それを合図にレンは変化を解く。
「で…。くれるんですよね、それ。」
レンは遠慮なく手を差し出した。
「ま、やってもいいんだがな。一つ頼みがある。」
「何ですか?」
「瀬戸空斗と知り合いだろ、お前。」
新田はにっと笑いながら言う。
「まぁ。っていうか、そんなことまで知ってるんですね。」
レンは嫌そうな顔をする。
「まぁな。だからお前さんから瀬戸さんに口きいてくれよ。瀬戸さんの後ろ盾があれば情報漏洩のお咎めを受けなくて済むんだ。」
そう言って、電話番号が入った名刺をレンに差し出した。
「わかりました。瀬戸さんにはすぐに伝えておきます。」
レンは名刺を受け取ると、無くさないようにポケットにしまう。
「頼んだぜ。はいよ。」
新田はそう言って、レンにROMを渡す。
データが手に入ったことは喜ばしいが、何処となく狐につままれた感は否めない。
レンは手元にどっさり積み上がったROMを見ながら疑問を口にする。
「あなたが色々知ってるのって、やっぱり江藤ですか?」
レンは情報元の当たりをつけて尋ねる。
「まぁな。俺がお前とその周囲の監視を任されてるからな。」
あっさりと新田は白状するが、レンにはどうにも腑に落ちない。
「監視担当のあなたは、何故私にデータをくれるんですか?江藤の部下なのでしょう?」
監視担当なら尚更データをすんなりくれるのは可笑しいと思う。
「命令違反は重罪じゃないんですか?」
場合によっては命の危険すら伴う可能性もあるんじゃないだろうか。
それを親切心、というだけで出来るものだろうか。