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君に届くまで

第10章 資材集め ーその2ー


レンが振り返るとそこには女の子が立っていた。
薄橙のふんわり長い髪に黒い制服の様なスカートを着ている。

「誰ですか?」

「ボクは乱だよ、乱藤四郎。五虎退の兄弟だよ。」

「私はレンです。資材は五虎退の兄弟の…薬研?を治すのでここに置かせてもらいます。」

「…そうじゃなくて。ここに置いておいたらボク達使っちゃうかもよ、ってこと。」

レンはまじまじと乱を見る。
にこりとも笑わない硬い表情だ。
服は所々切れていて血の匂いが濃い。怪我をしているのか。それもかなり大きな怪我。

「それは困りますね。では、手当てして応急処置をしませんか?今使われてしまっては薬研が持たないだろうし。」

レンが提案すると乱は目を見開く。

ーそんな変な事言った覚えは無いのだが…。

呆然としたかと思いきや、乱はくつくつと笑い出す。

「ふ、くくっ…、あははははは!!」

これにはレンは対処に困った。

ーなんなんだ一体。

ふと、縁側の外を見ると、鳴狐もそこにいて話を聞いていたらしい。
顔を背け肩を震わせて笑いを堪えている。

「…はぁ…。どうやらあなたは相当な変わり者の様ですね。」

やれやれ、といった風にお付きの鳴狐は言う。
そう言われたレンは戸惑うしかない。


「ご、ごめん、ごめん!あ、あまりにも斜め上の答えが返ってきたから。くくっ。もうおっかしくって!」

そんな息を絶え絶えに腹抱えて笑われても…。

「そんなに笑えたのは何よりですね…。笑いは幸せの壺と言いますし。」

レンが返すと、乱と鳴狐は益々腹を抱えて笑い転げた。
刀の笑いの壺はよくわからない、とレンは思った。

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