第54章 政府の企み ーその2ー
通行証を使って改札口を出ると、以前警報が鳴った時に警備員が出てきた部屋へと向かう。
警備室と言ったらここしか思い当たる場所はない。
コンコンコン。
ノックをすると、幾らもしないうちに中から制服を着た人が出てきた。
「レンと言います。新田さんに呼ばれて来ました。」
「あぁ、聞いてますよ。こちらです。」
そう言って奥へ案内される。
その人は、ドアの横の壁に取り付けてある電話の受話器を取る。
「新田さんですか?…はい。レンさんという方が見えてます。…はーい。」
その人が受話器を戻したと同時にドアが開かれた。
「おー、来たな。入ってくれ。」
出て来た男はレンにそう言うと、中へと戻っていく。
彼が新田なのだろう。
「どうぞ。」
親切にその人は、閉まりかけたドアを支えて、レンを中へと促した。
「…ありがとうございます。」
レンは最大限に警戒しながら中へと入っていく。
ガチャン。カチャン。…ピピッ。
ドアが閉まると同時に鍵がかかる音がする。
他の出入り口と言えば、右側の天井付近に横長に広がる窓だけだ。
遠目から見るに、人ひとり通れるか否か…。
いざとなったら、あの窓を壊して出て行こうと算段をつける。
「お前、本当にあのレンだよな?」
新田は不思議そうにレンをジロジロと見る。
正体を知っているのなら、変化をしていては話が進まない。
レンは、抵抗感を抱えながらも変化を解いて元の姿に戻る。
「…この姿なら満足か?」
レンは、若干渋い顔をしながら新田に問う。