• テキストサイズ

君に届くまで

第54章 政府の企み ーその2ー



『まぁ、そうカッカするなって。お望みの物をやるからよ。
1階入り口前の警備室に来いよ。話はそれからだ。』

「…もし、断ったら?」

『別にどうもしない。これはただの親切心だからな。』

レンは電話越しで逡巡する。

罠か。
それとも本当に親切心か。
現状、罠の可能性は高いだろう。
罠と分かっていても飛び込むべきか。

『あ、そうそう。俺の名前は新田だ。警備室で俺の名前を出せば通るよう話をつけておく。じゃあな。』

そう言って、一方的に電話は切れてしまう。
レンはゆっくりと受話器を置きながら考える。

罠だった場合を考えて、影分身を行かせようか。
けれど、交渉を持ち込まれた場合。こちらの目的の物を本当に持っているとしたら、影分身では見破られた時に分が悪くなる。

安全をとるべきか。
危険を承知で飛び込むか。

『絶対に無事に戻って。』

『僕達がいるって、忘れないで。』

『危ないと思ったら、迷わず引き返すこと。約束だよ。』

加州、大和守、燭台切の言葉が過ぎる。
彼等のことを思えば、ここで引き返すのが最善だ。


だが、レンは迷った末、後者を選ぶ。
すぐ目の前に手がかりがあるのだ。
だったら、この膠着状態を脱する為にも乗ってみる価値はある。

レンは1階の警備室へと急いだ。
/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp