第54章 政府の企み ーその2ー
『まぁ、そうカッカするなって。お望みの物をやるからよ。
1階入り口前の警備室に来いよ。話はそれからだ。』
「…もし、断ったら?」
『別にどうもしない。これはただの親切心だからな。』
レンは電話越しで逡巡する。
罠か。
それとも本当に親切心か。
現状、罠の可能性は高いだろう。
罠と分かっていても飛び込むべきか。
『あ、そうそう。俺の名前は新田だ。警備室で俺の名前を出せば通るよう話をつけておく。じゃあな。』
そう言って、一方的に電話は切れてしまう。
レンはゆっくりと受話器を置きながら考える。
罠だった場合を考えて、影分身を行かせようか。
けれど、交渉を持ち込まれた場合。こちらの目的の物を本当に持っているとしたら、影分身では見破られた時に分が悪くなる。
安全をとるべきか。
危険を承知で飛び込むか。
『絶対に無事に戻って。』
『僕達がいるって、忘れないで。』
『危ないと思ったら、迷わず引き返すこと。約束だよ。』
加州、大和守、燭台切の言葉が過ぎる。
彼等のことを思えば、ここで引き返すのが最善だ。
だが、レンは迷った末、後者を選ぶ。
すぐ目の前に手がかりがあるのだ。
だったら、この膠着状態を脱する為にも乗ってみる価値はある。
レンは1階の警備室へと急いだ。