第54章 政府の企み ーその2ー
「お前、前に五稜郭に入ったって言ってたな。
もう一回入れるか?」
それを聞いて、燭台切が焦り出す。
「ま、まさか…!」
「そのまさかだ。無茶を承知で頼む。この映像を取り扱ってる部署がある筈なんだ。そこを突き止めて、加工される前の全部が写ってる映像を手に入れてくれ。」
「ほんとに無茶だよ!レンに死ねって言ってるようなもんじゃん!」
加州が悲鳴に近い声を上げた。
「五稜郭がどんなとこだか分かってるの!?塀には結界が張られてて、防弾ガラスで守られてて、銃を持った人間はうじゃうじゃいるし、鴉だっている!!」
国会議事堂での出来事が加州の頭を過ぎる。
「あの時だって、別行動で五稜郭に入ったレンは鴉に刺されて大怪我負ったんだ。一歩間違えてたら死んでる!それを承知でレンに行けって言うのかよ!」
レンの刀剣達は、その時の様子を思い出して苦い顔で俯いた。皆、レンの手当てに当たっていたから、どのくらいの怪我なのか知っている。
それをもう一度、というのはあまりに酷なことのように思える。
「加州さん…。」
レンは加州の名前を呟いたきり、何て言ったらいいのかわからない。
人から心配されるなんて経験は初めてだ。
嬉しいような。
歯痒いような。
こそばゆいような。
レンは困ったように頬を掻く。
「それでも、だ。それが出来るのはレンしかいない。
運良くそれが手に入れば、盤上の駒を全てひっくり返せるんだ。
だが、向こうもおいそれとデータを出すとは思えない。だから深追いはしなくていい。あくまで可能性があるなら試してみたいってだけだ。」
暗に、やれるか、と目で問う瀬戸にレンは頷く。