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君に届くまで

第54章 政府の企み ーその2ー



「すみませんが、あなたの服のスペアってありますか?ズボンだけで構いません。」

戦帰りの同田貫正国だった。

「あ、あるには、あるが…。あんた、本当に行くのか?」

「戦闘力なら自信がありますので。絶対に目的は果たせます。」

同田貫は、微妙な答えが返ってきたレンを、微妙な顔付きで見返した。

瀬戸は、それを見て大きくため息をつく。

ー腑抜けてる場合じゃないな…。

レンを止めなければ次の騒ぎが起きかねない。今までは力を抑えていたのだろうが、こうなってはもう後先を考えてはいないのだろう。
そうなれば、レンは遅かれ早かれ自滅するだけだ。

「対抗策、か…。」

瀬戸は俯きながら呟いた。
相手は情報戦を強いている。
だったらこちらも情報戦で打って出る。

“目には目を、歯には歯を”ってやつだ。

「待て、レン。」

瀬戸は顔を上げて、レンを見る。

「何ですか?」

レンの瞳には僅かに怒りが滲んでいる。
それもそうか、と瀬戸は思う。
こんな風に悪意的に槍玉に上げられれば、誰だって怒りたくもなる。

「取り敢えず落ち着け。七海は…そうだな。叔父さんに頼んどくか。俺の叔父は時の政府の補佐官をしていてな。その権限を使って七海の安全を確保してもらう。」

「…は?」

レンは怪訝な顔をした。
言われた意味が飲み込めない。

ー瀬戸は時の政府の関係者だったのか…?

「瀬戸補佐官様の御親戚の方、だったのですか…。」

こんのすけも呆然と呟く。

「まあ、な。出来たらあんまし叔父さんには頼りたくはなかったが、今は手段を選んではいらんねえ。使える手は全て使う。」

瀬戸の目に強い光が灯る。

「今までかき集めてきた証拠を使おうと思う。が、その前にこの映像の全部が入ってるデータを手に入れられないか、試してみたい。そこで、お前の出番だ。」

そう言ってレンを見た。

「何をすればいいんですか?」

レンは不思議そうに瀬戸を見返す。
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