第54章 政府の企み ーその2ー
「瀬戸さん、知り合いですか?」
レンは瀬戸の様子を伺いながら控えめに問う。
その声で、少し落ち着きを取り戻したらしい。
瀬戸はレンを引っ張って捕虜から少し距離を取り、声を抑える。
「あいつは、今うちでメイドやってる奴の親戚でな…。」
「…念の為お聞きしますが、色恋沙汰ではないですよね?」
レンの質問に瀬戸は嫌そうな顔を浮かべる。
「んな訳ねぇだろうが。メイドと色恋沙汰なんて外聞悪いことこの上ねぇ。んな面倒くせぇこと誰がやるか。」
「そんなに嫌ですか。まぁ、信じます。続きをどうぞ。」
瀬戸は一つため息をつくと、話を戻す。
「瀬戸家に恩があるから、てっきり日和見派だと思ってたんだがな…。
あいつはたぶん江藤についてる筈だ。だから七海を襲った。お前と近侍係の動向を探ってリークしてたのも、たぶんうちのメイドだ。」
「成程。だから私の留守を狙えたんですか。」
レンはあくまで淡々と受け答えをする。
「それはそうと、どうにかしてあの人揺さぶれませんかね。」
「何が知りたいんだ?」
「勿論、襲撃の目的です。」
「つってもなぁ…。あの通りだんまり状態だからな。」
瀬戸は後ろを振り返る。
捕虜は相変わらず、虚空を見たままだ。
レンは訝し気に捕虜を盗み見る。
「…あの人、何であんなに落ち着いてるんですかね。今日一回も騒ぎ立てたことないんですよ。」
「そう言われてみると…、変だな。」
「経験上、これだけ警備が手薄だと、一回くらいは脱走を試みるものなんですけどね。それか出せ、と暴れるとか。」
それを聞いて、瀬戸は不信感を抱き始める。
「助けが来ると踏んでいるのか…?」
「もう一度襲撃があるってことですか?」
瀬戸の言葉にレンは眉を顰める。