第54章 政府の企み ーその2ー
「ここです。」
瀬戸は、レンの先導で捕縛した者を捕らえてある部屋へとやってきた。
レンは障子を開けて中へと入って行き、瀬戸はレンに続く。
捕虜の1人は、首から下をガチガチに氷で覆われていて、身動きが全く取れない状態で寝かされていた。
もう1人も口から下、上半身が完全に氷で覆われている。
成程、これは逃げたくても逃げられないだろう、と瀬戸は思う。
捕虜2人は、寝ているのかピクリとも動かない。
顔は口布で覆われていて、特殊グラスをかけているせいで、判別が出来ない。おまけにヘルメットまで被っていては尚更わからない。
先ずは顔の確認を、と思い、瀬戸は手前にいた捕虜の1人のヘルメットやグラスを外す。すると、見覚えがある顔が出てきた。
ーこいつ、何処かで…。
瀬戸は更に口布を外すと、捕虜が目を覚ました。
「お前…!」
瀬戸は、驚いて一歩下がった。
捕虜はニヤリと嗤う。
「何で…。」
瀬戸は顔を歪め、不機嫌に後ろ頭をガシガシと掻く。
この男の親戚筋が、今、瀬戸邸でメイドをやっている。
もしかしたら…。
「お前、なんだってこんなことしたんだ。」
瀬戸はぶっきらぼうに問う。
「何でも何も、命令ですから。」
「じゃ命令内容は何だ。」
「言うと思いますか?俺は政府の特殊班ですよ?」
馬鹿にしたように言うと、瀬戸から目を逸らして虚空を見る。
瀬戸はそれを聞いて眉を顰めた。
「命令を出したのは誰だ。」
「何であんたに教えなきゃいけないんですか。」
「…江藤か。」
「さぁ…。どうかな…。」
瀬戸は舌打ちした。
このまま問答を続けても埒があかない。
瀬戸は苛々と、部屋を歩き回りながら頭を掻く。