第54章 政府の企み ーその2ー
夕刻時の空の色が変わる頃。
よっ、と言いながらレン達の部屋に瀬戸が顔を出した。
「お疲れ様です。七海さんの所には行きましたか?」
「いや、まだ行ってない。行く前に捕虜の面拝んどこうと思ってな。何処にいるんだ?」
「七海さんの近くの部屋に転がしてあります。」
それを聞いて、瀬戸は渋い顔をする。
「…なんだって七海の近くに置いとくんだよ。」
「大丈夫ですよ。厳重に拘束してありますから。近い方が見張りも警護もしやすいので。」
それを聞いて瀬戸は頭を抱えた。
「…はぁぁ。気持ち的な問題だよ。
で、そいつから何か聞き出したか?」
その質問に、レンはすっと視線を下げた。
「いえ…、何となくその気になれなくて…。」
昼間の燭台切の言葉が蘇ると、何となく部屋に行くことも戸惑われるのだ。
何より気持ちがざわざわと落ち着かない。
これでは、またこちらが踊らされるだけの様な気がする。
「珍しいな。お前が渋るなんて。」
瀬戸は少し驚いた。
そして、昼間の電話の様子を思い出す。
「諦めが早かったことが気になる、か?」
レンは少し驚いて瀬戸を見上げた。
「…はい。それで気持ちが落ち着かなくて…。」
取るに足らないレンの呟きを、瀬戸は気に留めていたのだ。
「そうか…。」
瀬戸は困った様に笑いながら、ガシガシとレンの頭を撫でる。
「じゃ、一緒に行くか?俺が取り調べるからお前はそこで見てろ。」
レンは少しほっとする。
少なくとも、自分が尋問しなければ、相手に踊らされる可能性は低くなる。
レンは、はい、と返事をして瀬戸に続こうとした。
だが、パシっと手を引かれ、止まる。
彼女が振り返ると、手を引いたのは隣にいた大倶利伽羅だった。
「どうしたんですか?」
レンは不思議そうに大倶利伽羅に尋ねるが、彼はそのまま押し黙ってしまう。
その後ろには、部屋で待機していた他の刀剣達が少ししょんぼりと肩を落としている様に見える。