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君に届くまで

第54章 政府の企み ーその2ー



レンはざわざわとした気持ちのまま、見回りの様子を見にいく。

『人殺しが!』

男の言葉が脳裏をよぎる。
たかが揶揄されたくらいで熱り立つなんて、とレンはひとりごちた。
気持ちが落ち着かないせいだろうか。

けれど、あの男のあの落ち着きようは、何となく気にはなる。
何故、自身の命を顧みずこちらを挑発出来るのか。
何かの企みがあるのだろうか。


「加州さん。」

敷地の中央近くに立っていた加州に声をかける。

「レン。」

「見回りお疲れ様です。異常ありますか?」

「いや、ないよ。今のところ大丈夫。」

加州は周りを見渡しながら答える。
まだ見回りは終わってはおらず、視線の先では刀剣達が辺りに目を光らせている。

「そうですか…。」

レンは加州の返答に肩を落とす。
いっそ、異常があった方がかえって落ち着くかもしれない。

「どうしたの?」

加州はレンを見て、内心首を傾げる。
彼女の言い様は、まるで異常があってほしいかのように聞こえる。

レンはそれに答えずに首を横に振る。

「いえ、問題ありません。異常がなければ報告が上がり次第切り上げていいと思います。」

「そう、わかった。…何かあるならちゃんと俺達に話してね?」

加州は困った様に笑いながらレンに言うと、彼女は加州を見て頷く。

ー大丈夫。きっと気のせいだ。

レンは自身に言い聞かせる。
これだけ見回って何も無いんだから、仕掛けられている筈がない。

レンは、引き続き加州達に場を任せて一度戻ることにした。
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