第54章 政府の企み ーその2ー
「…誰から聞いたんだ?私がこの国の人間ではないと。」
これを知っているとしたら、政府の上層部くらいだろうか。そうなると奥脇と繋がりのある江藤が出所だろう。
「さあな。」
男はそれきりだんまりを決め込んだ。
レンは段々と苛々しはじめる。
元よりレンの常識に沿うならば、こんな悠長に問答をするだけ無駄なのだ。
捕虜は尋問して、或いは痛めつけて情報を搾り取るもの。
レンはそっと印を組んでから徐に男に歩み寄ると、首を掴み、更に凍らせる。
「……!」
男は恐怖の眼差しをレンに向けながら、黙って耐えた。
氷はパキパキ…と音を立てながら、首を覆い尽くし、口元も覆い尽くそうとする。
「レンちゃん!」
燭台切は見ていられなくて思わず、制止する。
レンはその声に反応し、ピタリと氷を止めた。
「…話す気になったか?」
レンは闇の深い眼差しで男をひたと見る。
まるで殺すことを厭わない目だ、と男は思う。
次いで可笑しく思えて、思わず笑いが込み上げた。
「…何が可笑しい。」
レンは地を這う様な冷たい声音で男を責める。
「くくくっ。だって可笑しいだろ!お前みたいな血塗れた奴でも審神者になれるのに、俺達みたいな下々民は審神者に選ばれることはないんだからな。見向きもされないんだ!」
レンは怪訝な顔を向ける。
「何言ってるんだ、お前。さっさと質問に…」
「人殺しが!お前にとって俺達の命なんて取るに足らない石ころだろ!?さっさと殺せばいい!!」
その言葉にレンの手がピクリと動いた。
「強奪者が!審神者になったからってふんぞり返っていい気になってんじゃねぇよ!!」
レンはすっと立ち上がった。
その目には僅かに怒りが含まれている。