第54章 政府の企み ーその2ー
部屋の前には鯰尾が見張りに立っていた。
「見張り、ありがとうございます。」
レンがそう声をかけると、鯰尾は黙って頷いた後、ふいと顔を逸らした。
「あなたの為じゃないですから。」
「そうですね。でも礼儀としてはありでしょう?」
レンは淡々と言いながら障子を開けると、胴体を凍らせておいた方が真正面に胡座をかいて座っていた。真っ直ぐこちらを睨んでいて、入ってすぐに目が合う。
蹴り飛ばした方は、まだ気が付いていないらしい。ぐったりと四肢を投げ出している。
「…逃げようとは思わなかったのか。」
レンは冷たい目で睨んでくる男を見返した。
「この状態で逃げられる奴がいるのか?」
「足が無事なら試してみる価値はあるんじゃないか?」
「はっ。そんな無謀なことはしないさ。」
「あんた達なら出来そうだけどな。」
レンは、先程の逃げる時の体当たりを思い出す。
刀剣達が怯む程の気迫と体当たりの威力は相当のものと見る。
「…こんな無駄話をしに態々来たのか?」
男は嘲笑うかの様にレンを挑発する。
だが、レンはニヤリと笑ってそれに答えた。
「ご丁寧にそっちから切り出したんなら、話してくれるんだろ?」
「何を聞きたいんだ?」
「七海さんを襲った目的だ。」
「言うと思うのか?」
男はくつくつと笑い出す。
「外国人は能天気なんだな。」
この言葉に引っかかるものがあった。
この男はレンを”外国人”と呼んだ。