第54章 政府の企み ーその2ー
廊下にはレンが身代わりに使った穴だらけの丸テーブルが出されていた。
「レンちゃん。」
部屋の中から、燭台切が出てきた。
「七海さんはどうですか?」
「今、長谷部君の手入れをしてるよ。」
「起きて大丈夫なんですか?」
「手入れをしたいからって、聞かなくて。」
燭台切は苦笑する。
「そうですか。何か変わったことは?」
「特には無かったよ。
あぁ、そういえば。レンちゃんが凍らせた人間はどうするんだい?一応、気を失ってた人と一緒に近くの空き部屋に入れておいたけど…。」
「あー…。」
そういえば、そんなのいたな、とレンは思い出した。
「もしかして…忘れてたのかい?」
「すみません。すっかり忘れてました。
とりあえず後で尋問しますから、うるさくないようにして転がしておいてください。」
それを聞いて、燭台切は苦笑する。
「お手柔らかにね。」
燭台切の言葉を受けて、レンは肩を竦める。
「貴重な証拠ですからね。
それと、七海さんとこの江雪さんに見回りを頼んだんですが、報告を受けてますか?」
「あぁ、聞いてるよ。特に何も無かったって。」
「そうですか…。」
レンは何処となく腑に落ちないが、罠は無い方がマシではある。
「何か気になるの?」
「まぁ、ね。何となく空振り感がありまして…。でもま、何も無いならそれに越したことはありませんから。」
そう、自身に言い聞かせる様に言って中を覗く。
開け放たれていた部屋の入り口から顔を出すと、薬研をはじめとした面々が七海を心配そうに見守っていた。
そのすぐ側で、傷を負った長谷部が寝かされている。
七海は周りを見向きもせず、一心不乱に手入れにあたっている様だ。
レンはその様子を見て、一度引っ込んだ。
今は声をかけられる雰囲気ではない。
レンは微妙な面持ちで燭台切に向き直る。
「先に捕虜の尋問に行きます。案内してもらえますか?」
「OK。こっちだよ。」
逃げたな、と燭台切は内心思いながらも、歩き出した。