第54章 政府の企み ーその2ー
「離しなさいよ!いきなり来て何も言わずに拘束するなんてどういうことなのよ!」
レンが七海の部屋に駆けつけると、武装した集団が七海を拘束して銃を突きつけていた。
長谷部は負傷したのか、利き手の腕を押さえてうずくまっている。
「レンさん、主を…!」
長谷部が助けを求めようと声を出した時、彼の近くにいた者が持っていた武器で長谷部の後頭部を叩きつけ、彼はそのまま気絶してしまう。
「長谷部!!」
七海が叫ぶもピクリとも動かない。
相手はざっと数えて8人。
武器は銃と腰元に下げているナイフだろう。
ジャケットはおそらく防護服。
胸元には左右に薬莢を携えている。
レンは腰を低く落とすと、構えを取った。
「動くな!!」
男の制止も聞かずに真っ直ぐ七海目がけて走り出す。
バババババン!!!!
レンが踏み出したと同時に、男達は一斉に発砲する。
だが、
ボン!
という音と共に、部屋に置いてあった丸テーブルが穴だらけになって現れた。レンの姿はない。
男達は驚いて目を見開いた。
「どこへ行った!!?」
男達が辺りを見回しているうちに、レンは七海を捕らえている男の背後から後頭部目がけて上段蹴りを食らわした。
「がはっ…!」
蹴られた男は白目を剥いて倒れてしまう。
驚く暇もなく、七海の反対側にいた男も、瞬く間に全身がパキパキパキン!と氷に覆われていく。
「な、なんだ!?」
男の怯えた様な叫び声にも構わず、七海の腕を掴んでいた手首近くに氷千本を貫通させる。
「ぎゃぁあぁぁ!!」
突然の痛みに、男は驚きと恐怖で思わず手を離した。