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君に届くまで

第54章 政府の企み ーその2ー


その瞳には、憎悪の感情は見当たらなかった。

「でも、レンはあんたが潔白だと信じて疑わなかった。潔白だと俺達に証明する為だけに、一芝居打ったんだ。」

疑わなかった訳ではないが…、とレンは思ったが言わないでおいた。
それを言えば話がややこしくなるのは明白だ。

「だから、責めるなら俺を責めてくれ。頼む!」

薬研は額を擦り付けるように、頭を下げて土下座する。

「俺からも頼む!責めるなら俺も一緒に責めてくれ。」

後ろから声がしてレンが振り向くと、鶴丸が土下座をしていた。その周りには、いつの間にか皆が揃っていて、同じように土下座をしていた。
様子を見ていた刀剣達が、レンと薬研だけが責められている状況に居ても立っても居られなくなったのだ。

「本当にレンは、七海さんは潔白だと言っていたんだ。俺達はそれが信じられなくて、江藤の言うことを鵜呑みにして、ここを出ようとしていた。レンはそれを止める為に、七海さんの本音を俺達に聞かせる為にやっただけなんだ。」

「本当にごめんなさい!
確かに提案したのはレンだけど、レンだけが悪い訳じゃないんだ。この方法で試そうと思ったのは僕達なんだ。」

加州と大和守は懸命に謝罪する。

「レンを責めるなら、ボク達も一緒に責めてほしい。元々はボク達がここを出るなんて言い出さなきゃ、レンもこんな風に試そうとは思わなかったと思うから。」

「ぼ、僕も同じです。本当にごめんなさい。」

乱、五虎退が言い、頭を下げた。



「「「本当にごめんなさい!!」」」



刀剣達は、揃って深く土下座をする。
それを見たレンも、すみませんでした、と言って彼等に倣った。

七海は、渋い顔でそれを暫く見遣ってから、これ見よがしに深く深いため息をつく。

「…分かったわ。許してあげるわよ。」

七海がそう言うと、彼等は顔を上げてほっとしたように七海を見る。

「その代わり、今度私を試そうとしたら容赦しないわよ。いいわね。」

「心得た!」

鶴丸がすかさず言うと、他の面々もこくこくと頷く。
七海はそれを見て、疲れたように再びため息をついた。

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