第53章 疑惑
「まぁ、なくはない話ではありますね。」
筋はまあまあ通っている、とレンは思う。
「俺は江藤の話に信憑性があると思ってる。」
「瀬戸さんによると、七海さんは、お姉さんのことであなた方を恨んではいないそうです。致し方ないことだと言っていたようですよ。話したがらないのは、単に思い出したくないからだと。」
レンがそう言っても鶴丸は頑なに聞こうとせず、視線を逸らした。
「鶴丸さんは瀬戸さんも信じられない、ですか?」
「…瀬戸は、人間だ。」
「私も人間ですよ?」
「レンは別だ。だが他は信じられない。それも前の審神者の縁者なんだぞ?」
鶴丸は眉根を寄せて、強く言う。
その瞳には、何処となく怯えが滲んで見えるような気がした。
「私はそうは思いませんけどねぇ…。」
「七海はきっと俺達を恨んでいると思う…。」
レンは手をぎゅっと握りしめて俯く鶴丸を、困ったように見つめる。
「…他の人は何て言ってるんですか?」
「みんな同じだ。七海が信じられないでいる。だから七海の本丸を出ようという話になったんだ。」
成程、とレンは思う。
「なら、一度戻りましょうか。」
「あぁ。頼む。」
鶴丸は首に下げていた転移装置をレンに渡した。彼女は受け取ると鶴丸と手を繋ぎ、転移装置にチャクラを流す。
眩い光が2人を包み込み、しゅんっと一瞬で消えると、後には光の粒子が散って消えていった。