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君に届くまで

第9章 〜〜幕間1〜〜





鳥居の側の木の陰に、加州は隠れて見ていた。
五虎退の打ち合いや鳴狐とのやり取りは、どことなく仲が良さ気で楽しそうだ。

本当は加州だってあんな風に戯れてみたいと思う。
けれど…。
その度に人間が安定にした事を思い出す。

大和守安定。加州同様、新撰組一番隊組長の愛刀として同じ主に仕えてきた刀で、兄弟同然の唯一無二の存在だ。
前の主にぼろぼろにされ、折れる寸前に追い込まれ、今は加州達の部屋で眠り続けている。


人間なんてどれも同じ。
関われば関わる程、身も心も壊れていく…。

わかっているのに、と加州は歯噛みする。

わかっているのに主に惹かれる、焦がれる。
最早、刀の性で本能だ。自分では止められない。

「あれ?加州君?」

加州はびくりと肩を震わした。
考え事に夢中で後ろの気配に全く気づけなかったのだ。
加州は恨めしそうに振り返る。

「ごめんごめん、そんなにびっくりするとは思わなくて。」

声の主は燭台切だった。

「なんでこんな所に居るのさ。」

不貞腐れながらも加州は返事を返す。

「いやー、面白い事始めたな、と思って。薬研君を手入れするんだって。」

「え、何で知ってるの?」

「いち早く情報を掴むのは、戦術の一つだよ。」

燭台切は片目を瞑って、笑いながら答えた。
そういうことじゃないんだけどな、と思いつつもマトモに答えてはくれないだろうとも思う。

加州は一つため息をつく。

「君は行かないの?」

燭台切はそう言ってレンがいる方を指さす。
すると、途端に加州は眉を顰めてそっぽ向く。

「行かない。行きたくない。」

絶対に曲げないと言わんばかりの意思表示だ。
燭台切は苦笑する。
本当は行きたいんだろうに。

「なら、帰るかい?周回するだろうから、まだまだかかると思うよ。」

燭台切の言葉に加州は、ゔっと言葉を詰まらせる。
その様子に思わず吹き出しそうになる。

「…笑い堪えてるの丸わかりだから。」

加州は渋い顔で燭台切りに返す。
燭台切は、とうとう笑いを堪え切れずに吹き出した。


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