第53章 疑惑
――同日、昼過ぎーー
「まさか、そんな…。」
こんのすけは彼等から事情を聞き、言葉を失った。
「俺達は確かに聞いた。七海の姉は俺達の主だったと、禍ツ神に殺されていると。」
鶴丸は更にきっぱりと言い切る。
「た、確かに、二代目審神者は奥脇様のお嬢様です。ですが、七海様があなた方を恨んでいるとは…。」
だが、こんのすけは信じたくない気持ちが勝る。
「江藤の言う通り、もし、助けるふりをしているのだとしたら?」
「そしたら俺達は袋の鼠だぞ。気づく頃にはもう捕まっている。」
加州と大倶利伽羅も危惧する可能性を上げる。
「…しかし…。しかし、そうだとすると、何故我等を匿う必要があるのですか?」
こんのすけは納得できずに問い返す。
「一気に捕らえるつもりとか?」
「逃がさない為の策を講じているとか?」
大和守と乱は考え得る可能性を上げてみる。
こんのすけには、そのどれもが否定も肯定も出来ない。
「…レン様は何と?」
「今日、鶴さんが事情を話して説得する手筈になってるよ。」
こんのすけの絞り出す声に燭台切が答える。
「…仮にここを出るとして…、どこへ行かれるおつもりですか?」
こんのすけは心配そうに彼等を見上げる。
「わからない。けど、ここに留まるよりは安全だと思うんだ。」
加州が難しい顔をしながら俯く。
その様子から彼等も苦渋の決断なのだろうことが、こんのすけにも分かった。
出来ることなら止めたい。江藤の言うことに理があるのだとしても、こんのすけにはどうにも江藤の、奥脇の方が信じられない。
だが、こんのすけには説得出来るだけの言葉が見つからず、そのまま俯いてしまった。