第53章 疑惑
レンを見送った鶴丸は、瀬戸邸へと入っていく。
「いらっしゃいませ。」
メイドに出迎えられ、鶴丸はその場でお辞儀をし挨拶を返す。
「おじゃまします。」
「いつものお部屋へご案内致します。」
そう言ってメイドは案内する。
レンと近侍の刀剣は、瀬戸の勧めで、現在瀬戸邸にご厄介になっている。
彼等も本当はレンに着いて行きたいのだが、何せ彼等は見目が麗しい。その為、目立つことを危惧した瀬戸から止められたのだ。
鶴丸は部屋に入り、メイドが完全に遠去かったのを確認してから、朱い筒を取り出してこんのすけを呼ぶ。
「御用でしょうか?」
こんのすけは珍しそうに鶴丸を見上げた。
普段は、筒に収まっていて呼び出されることはほとんどない。
余程の大事でもあったのかと少しの不安が過ぎる。
「あぁ。その、ちょっとだけ本丸へ戻りたいんだ。出来るか?」
鶴丸は悪びれながらこんのすけにそろりと尋ねる。
「一度くらいでしたらなんてことありませんが…。レン様はご一緒ではないのですか?」
こんのすけは辺りをきょろきょろ見回してレンの姿を探す。
「レンは瀬戸と一緒だ。」
「そうですか…。わかりました。橋渡しを致します。」
そう聞いて、こんのすけは内心首を傾げながら転移装置を起動させる。
「頼む。」
こんのすけは頷くと、術を発動させた。