第53章 疑惑
居候先である瀬戸邸に転移装置で向かうと、そのまま瀬戸に連絡を取る。
「遅くなりました。今瀬戸さんの家にいます。」
『こっちは今事務所にいる。今迎えをやるから。』
「よろしくお願いします。」
通話を切ると、ふと電話の履歴が気になりアプリを起動する。そして履歴を表示させると、登録していない番号が多く載っているのが目についた。
「何かあったのか?」
鶴丸は、いつものようにすぐにスマホを渡さないレンを不思議そうに見る。
「いえ。何でもありません。今日1日スマホを借りてもいいですか?瀬戸さんと頻繁に連絡を取らなければいけないので。」
それを聞いて、鶴丸は困ったように笑う。
「元々レンの持ち物だ。俺に断る必要はないさ。」
「その代わり、これを預けるんで。何かあった時は、こんのすけと逃げてください。」
そう言って、レンは首から金の鎖を外し、懐中時計に似たそれを鶴丸に渡す。
「これは…、転移装置か。」
鶴丸は驚き目を瞠る。
今のレンとって、これは命綱に等しい。
「はい。なくさないでくださいね。」
「あぁ。任せておけ。」
冗談めかして言うレンに鶴丸は笑って答えた。