第53章 疑惑
「鶴丸!」
加州は部屋に飛び込むと鶴丸を呼ぶ。
「ここにいる。落ち着け。」
鶴丸は、加州を宥める。
「七海さんのお姉さん、禍ツ神に殺されたって。鯰尾から聞いた。」
加州は息を切らせて座り込んだ。余程急いで帰ってきたと見える。
「俺は、”君達の元主だったみたいだよ”と鶯丸から聞いた…。」
鶴丸は眉根を寄せて俯いた。
「そんな…。」
「鶴丸!」
厚、乱、大倶利伽羅も丁度戻ってきた。
「七海さんのお姉さん、禍ツ神に殺されたって!」
「…あぁ、加州から今聞いた。」
「それと、俺達の元主だったんだって…。」
鶴丸と加州は難しい顔を3人に向けて答える。
それを聞いた彼等は息を呑んで、座り込んだ。
「決まりだな…。今回は江藤の言う通り、ここを出た方がいいかもしれない。」
「でも、出てどこへ行く?」
鶴丸の言葉に厚が不安気に尋ねる。
「遅くなりました。急いで瀬戸さんと合流しましょう。」
鶴丸達が話しているところにレンが部屋に入ってきて、彼等は思わず息を詰めた。
レンはその様子を見て、怪訝に思う。
「何してるんですか?」
「い、いや。何でもない。さ、行こうか。」
鶴丸は吃りながらも、慌てて立ち上がりレンを外へ促す。
レンは背を押す鶴丸の向こう側に、俯いて座る彼等をちらりと見てから部屋を後にした。