第53章 疑惑
『レンさんは確かに俺にとっては邪魔です。ですが、本丸が消えてしまっては元も子もない。妹を審神者にできなくなるからですよ。』
「…その申請が通ればどうなる?」
『当然のことながら本丸は消えます。
あなた方は行き場を失い、レンさんは七海様の本丸を不当に占拠したとされ、拘束されます。あなた方も解刀になるでしょう。
場合によっては、レンさんは国の持ち物を勝手に持ち出し私物化したとして、横領罪か窃盗罪が適応され禁固刑になる可能性もあります。』
鶴丸は息を呑む。
国が動けば、いくらレンでも逃げ切れない。
「…何をすればいいんだ?具体策があるから電話してきたのだろう?」
鶴丸は江藤に指示を仰ぐ。
「鶴丸…!?」
隣で聞いていた加州は慌てて止めに入るが、鶴丸に目で制された。
『…先ずは七海様の本丸を出ることをお勧めします。…管狐は一緒ですか?』
「…いいや。」
本当は本体である筒を持っているが、言わないでおいた。
『でしたら、あなた方だけでも逃げれば拘束されることは免れるかと思われます。審神者は本丸の中ならば全てに力が及びますので。』
「わかった、考えておく。」
鶴丸はそれだけ言うと、一方的に電話を切る。
「鶴丸!どういうことだよ!」
厚は鶴丸に詰め寄る。
「悪いな。でも確かめたいことが出来た。協力してくれ。」
鶴丸はそこにいた加州、乱、厚、大倶利伽羅に電話の内容を伝える。
「確か、前の審神者は前田の娘だとこんのすけは言っていたな。」
「じゃあ、七海さんのお姉さんが前の前、つまり二代目審神者?」
大倶利伽羅が言い、厚が言い直す。
「と言うことになるだろうな。それを確かめたい。」
「でも、どうやって?」
鶴丸が言い、加州が方法を問う。
「ここの刀剣達に聞いて回るしかないだろう。時間がない。レンが戻ってくる前にはことを済ませたい。」
鶴丸の言葉に加州達は頷いた。