第53章 疑惑
その時、電話が鳴った。
鶴丸がスマホの表示を見ると、登録のない番号だった。
暫く鳴りっぱなしのまま放っておくと、電話は切れてしまう。
だが、間髪入れずにまた鳴り出した。
鶴丸は彼等を見回し、彼等はそれに頷く。
「…もしもし。」
『よかった。出ていただけました。是非に聞いていただきたいことがございます。』
江藤だった。
「何の用だ。」
鶴丸は怒りを隠さず、要件を問う。
『…お怒りは覚悟の上です。七海様の件です。既に何人かの方にはお話致しました。
今、七海様の本丸にいるようですが、すぐに出てください。
七海様のお姉様は、元々はあなた方の審神者だった方でございます。七海様とお姉様は大変仲の良いご姉妹だったようです。
七海様は、そのお姉様を殺されたことを大変根に持っているご様子でした。態々お嫌いになっている奥脇様に手を貸す程には。
ですから、そちらにいては危ないのです。』
江藤は焦っているようで、早口で鶴丸に告げる。
「…何故、お前が俺達にそんなことを忠告するんだ。」
鶴丸が一番引っかかることだ。
何の企みがあってそんな引っ掻き回すようなことを言うのか。
『それは…。』
江藤は言い淀む。
やはり、何か企みがあるのだろうか。
鶴丸は眉を顰めた。
「何を企んでいるのかは知らないが、お前の…」
『こちらも本丸が消えてもらっては困るんですよ…!』
「何?」
『奥脇様と七海様は本丸の抹消申請書を出すおつもりです。』
「こちらにはこんのすけがいるんだから出来ないだろう。」
『ゴリ押しで通そうと思えば通せるだけの権威をお持ちなんですよ!あの方は!』
いつにない強い口調で言われた鶴丸は黙り込んだ。