第53章 疑惑
「鶴丸、動揺しすぎだから。」
加州は半眼で彼を見遣る。
鶴丸は後ろ頭を少し掻きながら苦笑いを浮かべた。
「悪い…。ついな。それよりも、さっきのこと詳しく聞かせてくれ。」
「俺も直接聞いた訳じゃないんだ。安定が電話をとったから。」
「なになに?何の話?」
乱が聞きつけて加州の側に寄る。
「安定が近侍の時に、瀬戸さん家で待ってたら電話がかかってきたみたいなんだ。登録してない番号だったから無視してたんだけど、あんまりにしつこいから出たんだって。
そしたら相手は江藤でね。
“七海様はお姉様を殺したあなた達を恨んでいます。危ないです。”って訴えてきたんだって。」
「どういうこと?」
乱は意味が分からず首を傾げる。
「わかんない。安定はお前の言うことなんか信じないって言って電話を切っちゃったんだ。けど、後になって気になり出してさ。俺に相談してきたんだ。」
鶴丸は難しい顔をした。
殺されたと言うからには二代目か三代目の審神者ということになる。
「それ、俺も聞いた。」
声の主を振り返ると、厚だった。
「一人でいる時に電話がかかってきて、江藤がそう言ってたんだ。凄い焦ってるみたいだったから気になってて…。」
「…俺も一人の時に聞いたぞ。」
大倶利伽羅まで名乗り出た。
「ねぇ、大丈夫なのかな?このまま放っておいて…。」
加州は不安気に鶴丸を見る。
「…だが、何でそれを態々俺達に言ってくるのか、謎じゃないか?」
鶴丸は腕を組んで考えながら言う。
江藤はレンを、刀剣達を、疎ましく思っている筈だ。