第53章 疑惑
レンは先日、瀬戸から電話を貰ったのだ。いや、借り受けた、と言う方が正しいかもしれない。
七海を通してでしか繋がらないことを面倒に思った瀬戸が、自分名義でスマホを買い、レンに与えたのだ。
「近侍係に預けてあります。持ち歩くの苦手で。」
「…持ち歩きなさいよ。何の為の携帯よ。」
七海は呆れ顔でレンを見遣り、一緒に聞いていた長谷部も呆れ返る。
「寝る前に少しだけいじって覚えるようにしてます。電話機能だけは覚えましたよ。」
「覚える気ないのね…。」
「いいんですよ。先に彼等に覚えてもらってから私が教わる予定ですから。」
レンは悪びれる様子もなくしれっと言う。
七海はそれを見て小さくため息をつく。
「まぁ、いいわ。ところで今日の近侍は誰なの?」
「鶴丸さんですね。」
「早いわね。もう一周したのね。
あぁ、そう言えば。昨日申請の許可が降りたのよ。今時間あるならあなたも来る?」
「そうですね、一緒に行きます。ちょっと鶴丸さんに待っててもらうよう言ってきます。」
そう言ってレンは走って行った。
「長谷部、準備をしてちょうだい。」
「わかりました。」
彼はすっと立ち上がり、準備に取り掛かった。