第53章 疑惑
――翌日――
瀬戸から、七海へ。七海からレンへと連絡が入る。
レン達は、七海に連れられて転移装置で彼女の本丸へと移った。
誰もいなくなった本丸に訪れる者があった。
江藤だ。
彼は数名の武器を手にした者と共に転移装置から現れる。
時刻は夜明け前で、まだ薄暗い。
江藤達は、刀剣達がいるであろう広間に向かう。
軒先の廊下に土足で上がり、バタン!と勢いよく障子を開けるも誰もおらず、もぬけの殻だった。
「いないですね…。」
彼等は、どうなっているんだ、と言わんばかりに非難の目を向けるも、これは江藤も預かり知らぬことだ。
「とにかく探してください。寝泊まりできる場所はこの広間と審神者の住居棟しかないんです。どこかに必ずいる筈ですから。」
江藤は苛立ちながらも、捜索の指示を出す。
そして自身は、封じの呪の状態を確認しようと塀の角に歩いて行く。
あれがある限り、外には出られない筈だ。
急ぎ足で向かうと、塀の角の丸太柱に札が綺麗に残っていた。試しに塀に触れてみると、呪はまだ健在のようだ。
江藤は念の為、4つ全ての呪の札を見て回るが、どれもが剥がされてはおらず壊された形跡もない。
ーどこだ、どこにいる…。
江藤は広間に戻ってみるも、やはり人一人もいない。審神者の住居棟に探しに行った彼等もやはり見つけられなかったようだ。
江藤は現状に頭を抱えた。
あと考えられる可能性とすれば、現代か。それとも七海の本丸か…。
なんとなくだが後者のような気がする、と江藤は思う。
面倒なことになった…。なんて報告すればいいんだ…。
「一度戻りましょう。」
武器を手にしている彼等は、渋い顔で頷いた。