第53章 疑惑
レンは少しため息をつくと、抱きしめたまま動かない燭台切の背に手を回し、ぽんぽんと叩いて宥めてみる。
だが、益々強く抱きしめられてしまい、逆効果だと理解する。
「まぁ、今日はしょうがないかな。」
「レンに言ったのは燭台切だしね。」
加州と大和守は、自分が最初に言えばよかった、と肩を落とす。
「羨ましいぜ、みっちゃん。」
胡座に肘を乗せた手に顎を乗せながら、太鼓鐘は燭台切を見遣る。
「この態勢で言うのもなんですが、つまりは思ったような結果にはなりませんでした、っていう話です。」
「いいさ。僕達は君といられるならどこだって構わない。」
レンは皆に向けて言うが、何故か燭台切がきっぱりと言い切る。
「光坊の言う通り、気にすることはないさ。俺達はキミの側にいられればそれでいい。」
鶴丸が燭台切の横から顔を覗かせ、レンの頭を撫でる。
「…暢気ですね。まぁ、あなた方がそれでいいならいいですが…。」
レンは暫く、呆れ顔でなすがままになっていた。