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君に届くまで

第8章 資材集め ーその1ー


転移装置に行くまでの道中、お付きの鳴狐はレンに、如何に人間が愚かな生き物なのかを説いていた。
五虎退と鳴狐が少々げんなりする程よく喋る。
当の本人は、そうですか、と相槌を打ちながら右から左へ聞き流していた。
こういう輩は逆らわず聞いているフリをしているのが得策だと経験上知っている。

前の審神者には余程腹に据えかねるモノがあったらしい。
だが、レンにしてみたらそんなもの”知ったこっちゃない”だ。


先程の鳥居を潜り、転移装置の前まで来ると、レンは五虎退に向き直る。

「五虎退、私に斬りかかってみてください。刀を使うのに抵抗があるなら鞘でもいいですよ。」

「…何を言っているんですか、あなたは。」

お付きの鳴狐は呆れたと言わんばかりにため息をついた。

困惑する五虎退にレンは再度促し、彼は戸惑いながらも鞘を構える。

「…いきます!」

そのかけ声と共にレンに振りかぶる。
が、軽々と避けられてしまう。

右、左、上、正面…。滅多矢鱈の攻撃だ。足捌きも覚束ない。

ー成程、これは成功率が落ちる訳だ。

その中で最も大きな弱点は…

「ここ、ですね。」

パシっという音と共に五虎退の脇腹が軽く叩かれる。
え、と言う驚きの言葉と共に、五虎退は呆然とレンを見る。

驚いたのは鳴狐も同じだった。レンの動きにも驚いたが、五虎退への一手が殆ど見えなかった。五虎退の攻撃の隙間にするりと入り込んだかの様な滑らかさだった。

「…やりますね。」

お付きの鳴狐はぼそりと呟く。

「戦闘時には脇腹を締めてください、それだけでも攻撃力は上がるはずです。」

レンが、呆然と自分を見ている五虎退に助言をすると、五虎退は黙って頷いた。

レンは胸元で十字の印を組むと、影分身の術、と唱え、影分身を4体出し、それぞれを各水晶に配置する。

「えぇぇぇええ!!」

お付きの鳴狐が驚きの声を上げ、鳴狐は驚きで硬直してしまう。

「びっくりしますよね…。僕も初めて見た時そうでした。」

「どど、どうなっているのですか!?人間が増えましたよ!?」
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