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君に届くまで

第8章 資材集め ーその1ー


レンは鳴狐に説明しておこうか、と考えていると背後から足音が近づいてきた。
次いで剣を抜く音が聞こえ、次の瞬間、シュっという音と共に剣を突き付けられる。
レンはひょいとそれを躱すと鳴狐に向き直る。

「五虎退に近づかないで下さい!」

高い声が広間に響く。
どうやら襟巻きだと思っていたのは、生き物だったらしい。

「な、鳴狐さん!」

五虎退が慌てて止めに入ったが、鳴狐は五虎退を自身に引き寄せると、眼光鋭くレンを睨みつける。

「審神者などというご立派な職に就く者であれど、本性は皆同じ。
残忍で惨たらしく、凶暴で傲慢!
この本丸に人間は要らないのです!気安く五虎退に触らないでいただきたい!」

その生き物は声高に叫んだ。
五虎退は鳴狐の剣幕に息を呑む。

まあ、それも確かに人間の側面だろうな、とレンと思う。
しかし、それはあくまで側面だ。
人は、彩りに溢れ、多様なモノだとレンは思う。

それに本丸に人間が要らないのであれば、こんのすけは頭を下げないだろうし、鶴丸や燭台切が問答無用でレンを叩き出すだろう。
ただ、それを今鳴狐と議論する気はない。面倒な予感しかしないし、平行線を辿るのが目に見えている。

「…そうですか。
それで確認なのですが、あなたは五虎退の遠征を手伝ってくれるということでいいですよね?」

「え、ええ。それはそうですが、他に言うことは無いのですか?」

鳴狐は戸惑う。もっと怒り狂うかと思ったのだが…。

「他に、と言うと?」

「凶暴で傲慢と言ったのですよ?それも審神者に。」

「まあ、それは確かにある人間の側面ですから。」

「この本丸に要らないとも言いました。」

「それに関しては、どうぞこんのすけに言ってください。私はただの居候ですから。」

「い、いそうろう…?」

「はい、居候です。話は以上ですか?なら早く行きましょう。」

レンは話を切り上げるとすたすたと行ってしまった。

2人は唖然としたまま固まっている。
レンは後ろから来ないことに気がつき、五虎退を促した。

「ま、待ってくださ〜い!」

五虎退は慌ててレンの後を追う。

「鳴狐、わたくしはあの人間が理解できませぬ…。」

その呟きに鳴狐は同意を示した。
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