第53章 疑惑
各々の食事が終わったところで一斉に片付ける。
一人で片付けるのではなく、皆で行うのであっという間に片付いてしまう。
それから自然とレンの周りに集まってきた。
「レンは向こうで何してたんだ?」
鶴丸が彼女に質問する。
「どこで寝泊まりしてたの?」
鶴丸に続いて乱も質問する。
彼等はレンがどのように過ごしていたのか気になるのだ。
「順を追って説明しますよ。私も報告したいことがありますし。」
レンはそう言って、居住まいを直した。
「加州さんから簡易転移装置をもらって現代に飛んでから、こんのすけの記憶を頼りに節子さんの実家を頼ろうと思ったんです。
けど、お金がなくて車やバスを使えなかったので、日雇いの仕事を探しました。それが大和さんや燭台切が今日いた所です。」
「あの工事現場のね。」
「大きなビルだったね。」
「そうですね。身元証明が出来ないと雇えないという国の規則だったんですが、社長のご厚意で雇ってもらいました。」
「それでかぁ。」
大和守は、迎えに行った時のレンの様子を思い出す。
「今度お礼に行きたいね。」
燭台切も闊達な社長の渡辺を思い出し、レンに微笑む。
「はい。いつか機会があれば。」
「それで、節子さんの家には行けた?」
加州が尋ねると、レンは首を横に振る。
「行けたには行けました。
ただ、別の人の持ち物になっていて、ご実家がなくなっていました。
なので、節子さんがお務めしていた社を訪ねたんですが、前田家が管理してしました。」
「前田って…、あの前田?」
加州は顔を顰める。
「おそらく。節子さんって苗字は前田ですか?」
加州は首を横に振り、思い出す。
「確か、二階堂だと思ったよ。」
「そうですよね。以前そう聞いた覚えがあります。なので、足が付くことを危惧して諦めました。
その代わりに古アパートを借りられそうだったんです。けれど、1ヶ月では資金繰りが出来ず、まだ確保できていない状態です。」
レンは結果を出すことが出来ず、少し肩を落とす。