第53章 疑惑
「食べたぁ〜…。」
レンは満腹になったお腹をさすり、満足気に柱に寄りかかる。
「早すぎるよ。」
近くにいた厚が笑う。
「久しぶりのご馳走だと思ったら、つい。」
レンは、お腹をさすりながら答える。
「え、どういうことだ?」
厚が不思議そうに問い返す。
献立は、白米が赤飯に変わっただけで、別段いつもと変わり映えはしない。
その様子を見ていたこんのすけは、食べていた油揚げを置いてレンの代わりに話しはじめる。
「主様は、ここ最近はずっと非常食を食べていたものですから。人の食事、という意味では久しぶりに感じるのも無理はないかと。」
「…非常食って…、乾パンか何か?」
こんのすけの隣に座っていた加州は、思わず地下室を思い出した。
「…いいえ、さすがに乾パンでは御座いませんが。カロリーメイトです。」
どちらにしろひどい、と彼等は思う。
カロリーメイトが悪いとは言わないが、全てにおいて優遇される審神者がそんなひもじい食事しか口にしないなんて…。
「…それは確かに久しぶりのご馳走だね。」
小夜は大真面目に頷いた。
「いや、そういうことでもない気がする。」
「お世話する人がいないと、レンってすごい偏った生活送りそうだよね。」
加州と大和はげんなりとした。
「お金を節約するには食費を削るのが一番手っ取り早いですから。それにお弁当って美味しくないんですよ。無駄に500円払うんなら200円の栄養食を食べた方がずっといいです。」
コンビニや弁当屋の物は、レンにとっては味も油も濃すぎるのだ。毎日食べてはかえって体の調子が悪くなる。
「意外に味にうるさい奴だったんだな…。」
薬研が突っ込んだ。
レンは気にする様子もなく、満腹の幸せに浸る。