第53章 疑惑
「それじゃ、いただきます。」
「「「「いただきます!」」」」
燭台切の挨拶を皮切りに、それぞれが手に箸を持つ。
レンは収穫したばかりだと言っていた漬物に手を伸ばした。
つん、とした酸っぱさと砂糖の甘さが優しく広がり、後に少しの塩味が色を添える。ご飯が進みそうな絶妙な仕上がりだ。
夢中で食べていたら、あっという間に皿を空にしてしまった。
ー後に取っておこうと思ったのに、失敗した。
レンは名残惜しそうに漬物の小鉢を置くと、少しくすんだ赤に染まった赤飯の茶碗を取った。
箸で一口掬うと、もちっとしてそうな感触が伝わる。炊き立てのようで僅かに湯気が上がり、独特の香りが漂う。
レンは迷わず口に運ぶと、もち米の甘味と僅かな塩味と豆のいい香りが、いい塩梅で混じり合う。お焦げがまたいい味を出している。
おかわりがほしい、と思わず思ってしまう美味さだ。
「おかわりあるよ。」
燭台切を見ると、嬉しそうに笑っていた。
レンは、急いで全ての皿を完食すると、小鉢と茶碗を持って配膳へと向かう。
「やってあげる。」
燭台切はレンから器を受け取り、彼女が食べたいだけよそってやる。
「ありがとうございます。」
レンは嬉しそうに僅かに微笑むと、また席に戻って行った。
燭台切は、くすくすと楽し気に笑みを零す。
「よかったな、光坊。ついでに俺にもくれないか。」
「OK!今日は沢山作ったからね。どんどん食べて。」