第53章 疑惑
「また来るわ。」
七海はそう言って、水晶に霊気を流すと方陣に立つ。
それに続いて長谷部、瀬戸が方陣に入ると、足元が光りだし、七海達を包み込むとしゅっと消えていなくなった。後には光の粒子が霧散する。
レンはそれを見送ってから踵を返した。
広間に着くと、刀剣達はご飯の準備をしているところだった。
「今日は、お赤飯だよ〜!」
乱が楽しそうにレンを呼ぶ。
「へぇ…。なんか嬉しいことでもあったんですか?あ、そう言えば魂縛りを跳ね除けたって言ってましたね。」
レンは早速ご相伴にあずかろうと、いそいそと広間に上がる。
「…いやいやいや。違うから。レンのご帰還だからだよ!」
「そうですよ。心配しました。」
それを乱と五虎退は頬を膨らませてレンを見る。
「…大袈裟ですよ。そこは術破りの方が快挙じゃないですか?」
レンはずっこけたい気分で彼等に返した。
「ま、どっちでもいいさ。元の鞘に戻って万々歳ってことで。」
鶴丸はよそったおかずをそれぞれに配りながら笑う。
「準備はいいかい?じゃあ、席について。」
燭台切の掛け声で、皆はそれぞれの席に座り、合図を待つ。
レンも席に着くと、ご飯の献立をしげしげと眺めた。
赤飯のごはん、菜葉の胡麻和え、赤かぶの甘酢漬け、大根と葉物の味噌汁。いつもと比べると少し豪勢だ。
「漬物はね、二十日大根だよ。食べ頃になったから収穫したんだ。」
レンは少し驚いて、燭台切を見てから漬物を見る。
確かに小ぶりだが、よく出来ていると思う。