第52章 審神者代理
「レン!」
鶴丸は少しの非難を込めて彼女を止める。
何故、そんな鼻持ちならない人間を信じようと思えるのか。
鶴丸にはさっぱり理解出来なかった。
レンは、鶴丸の制止を受けて刀剣達を見回していく。
皆、困惑するか疑心暗鬼に陥っているか戸惑っているようで、いい色は見られない。
「質問、してみればいいんじゃないですか?信じられるまで。」
レンは刀剣達を見ながら提案する。
「質問ってったって…。」
鶴丸は困惑気味に聞き返した。
何を質問したら信じられるのかなんて、見当がつかない。
レンは、鶴丸のその様子に既視感を覚える。
「もしかして…癖、なんですかね。それ。」
「どれだよ…。」
鶴丸はレンの言っている意味がわからず、眉根を寄せる。
レンは以前、鶴丸から同じ目を向けられたことがあった。
「あなたの場合、気持ち的に嫌なんでしょう?嫌な奴と繋がってるから嫌、みたいな。」
それを聞いて、鶴丸は瞠目する。
「頭では大丈夫そうだ、と思っていても、嫌な奴と繋がってるから毛嫌いする。食わず嫌いですね。」
レンは頓着することなく、さらっと言った。
「食わず嫌いと同じなのか…。」
鶴丸はがっくりと項垂れた。
「レンらしい例えだね…。」
大和守は力が抜けた。
言い得て妙だと、なんとなく思ってしまった。
「…決め手は?」
隣にいた鳴狐は、レンに尋ねる。
レンが信じるのなら、自分も信じたい。だが、鳴狐にはそれに足る決定打がない。
「そうですね…。強いて言うなら、審神者にさせられたから、ですかね。
私も忍に”させられた”口ですから。七海さんの境遇は少なからず理解が出来ます。」