第8章 資材集め ーその1ー
「五虎退!」
五虎退が部屋に戻ると兄弟が心配そうに駆け寄った。
「乱!起きていていいの?」
「ボクは大丈夫。それより人間の所にいたんでしょ?何かされなかった?」
乱はそう言うと、五虎退の全身を確かめる。
「大丈夫だよ。主様は優しい人だから。」
五虎退が答えると、乱は大きくため息をついた。
「ダメだよ、五虎退!簡単に人間を信じちゃ。人間はボク達の敵だよ!」
乱の言うこともわかる。けれど今度の主は違うと伝えたかった。
「乱、それでも僕はあの人だったら信じてもいいと思うよ。大丈夫。あの人は僕達をいじめたりしないよ。」
「五虎退…。」
乱は悲しそうな不安そうな心配そうな、複雑な顔をする。
「乱。僕、がんばってくる。絶対、薬研兄さんを元に戻すよ!」
乱は五虎退の言葉を受けて、逡巡した後、小さく頷いた。
「僕、助っ人を誰かに頼まないといけないんだ。」
「助っ人?」
「主様にさっき言われたんだ。遠征の成功率を上げるには助っ人を頼んだ方がいい、って。」
「まあ、普通は6人で出るものだもんねぇ。」
乱と五虎退はお互いを見て、途方に暮れる。
乱は起きていられるが戦場に出られる程体調が万全ではない。かと言って他の兄弟に頼もうにも、乱同様に怪我を負っている。
兄弟以外では、ほぼ交流はないので、心当たりは皆無だ。
「わたくし達が参りましょう。」
2人に声がかかる。
「鳴狐さん!」
「え、いいの?」
乱が問うと、鳴狐はこくんと一つ頷いた。