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君に届くまで

第8章 資材集め ーその1ー


ゆらゆら揺れながら五虎退は空を見上げると、空は薄暗い曇り空になっている。
自らの心情を写したかの様な空を見ているうちに、五虎退の瞳にまた薄ら涙の膜が膨れてきた。

何故僕はこんなに弱いんだろう、と彼は思う。
僕がもっと強ければ、僕がもっとしっかりしていれば、前の主様にも立ち向かえたかもしれないのに。薬研兄さんがあんな大怪我負わずに済んだかもしれないのに、と。

ぽろぽろと溢れる涙を、袖で拭っては堪え、拭っては堪えを繰り返す。
レンはそれを時々ちらりと見つつ、何も言うことなく歩いて行った。







レンは五虎退を抱えたまま厨まで来ると、一旦下ろし中を覗く。
誰かを探しているのだろうか。
と、思ったら、そのまま戸棚を物色し始める。
五虎退は、はらはらとしながらレンの動向を見守った。

戸棚の中間辺りから、何かを取り出すと、1つ手に取って齧り付く。
レンが作った物だろうか?
不思議に思っていると、レンはその皿を五虎退に差し出した。大きな海苔巻きのおにぎりが1つ乗ってる。 
思わず、ぐーとお腹が鳴り、顔が真っ赤になるのがわかった。
レンは何も気にする様子なく、”どうぞ”と言い、五虎退はそれをおずおずと受け取る。

「い、いただきます。」

初めて食べたおにぎりは、ほんのり塩味の優しい味がした。
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