第52章 審神者代理
「レンちゃん、お客さんだよ。」
「ありがとうございます。」
事務員の佐藤が応接室を指差して教えてくれるのに答えて、事務所を横切る。
ドアの前まで来て、コンコンコンとノックした。
「どうぞ。」
知らない女の声が聞こえてきて、レンはぴたりと動きを止める。
ー誰だ。
応接室のドアは、真ん中に縦長の窓ガラスが張られていて、中を覗けるようになっていた。
ヘルメットを目深に被り直し、そっと中を覗くと、先ず知らない女が1人目に入る。その向かい側に2人、レンに背を向ける形で座っていた。
女が逸早くこちらに気づいた様子で顔を向けた為、レンはさっと隠れた。
ー誰なんだ。
瀬戸が訪ねて来たと思ったのだが、全く見覚えない人物が居た。
レンは、咄嗟に追っ手がかかったものと判断し、そろりそろりと、音を立てないように離れる。
「あれ?レンちゃん、お客さんは?」
佐藤が不思議そうに問いかけてくる。
「知らない人だったので、おそらく人違いかと思います。」
「え、もしかして、会わずに引き返して来たの?」
佐藤が呆れた様子で言うのに構わず、
「すみません、応対してもらっていいですか?」
と言って、話しながら後ろ向きのまま出入り口へ向かう。
とにかく捕まったら終わりだ、という思考が頭を占める。
なるべく不自然にならないように、なるべく怪しまれることがないように、と逃げ道の最短ルートを計算して弾き出す。
レンはここから急いで出るべく、くるりと向きを変えたところで、がしりと両肩を正面から掴まれた。
次いでヘルメットが剥ぎ取られる。
そこには、顔を顰めた瀬戸が立っていた。