第52章 審神者代理
おそらく姉も似たり寄ったりの生活だったのだと、七海は思う。
ただ七海と違い、姉には歩み寄ってくれる人がいなかった。
だから禍ツ神に殺されてしまったのだろう。
彼等が禍ツ神に変貌する程の何かを、さゆりはしてしまったのだろうと思う。
だから、彼等を恨む気持ちは毛頭ない。
ただ、姉だけを責める気にもなれないのも事実だ。
ーあの時、私達は私達なりに手一杯だった。
「大丈夫ですか?」
思い出に耽っていた七海を気遣うように、長谷部からそっと声をかけられる。
「あぁ、昔を思い出していてね。
さゆりの名前を出してもあの人達は顔色を変えなかったのよ。」
「…知らないのでしょう。お姉様はきっと御名を教えていなかったのだと思います。」
「…そうね。私もそう思うわ。」
寂しいような、
悲しいような、
ほっとしたような。
七海は複雑な気持ちで外を眺めた。
「そう言えば、空斗さんには連絡がついた?」
「いいえ、連絡がありません。メールを送ってあるので、目は通してもらえるとは思いますが。」
長谷部は、PCのメールアプリを見つつ言う。
七海はそれを聞くと、ふぅとため息をつく。
「いつ連絡しても、すぐに繋がらない人ね。」