第52章 審神者代理
「こちらが調べたデータです。
前にいた審神者は江藤千尋です。兄は江藤千歳。今回の報告をしてきた男のようですね。」
長谷部から報告を受けたさゆりは、江藤千尋のパーソナルデータに目を通す。
江藤と言えば、前田家、奥脇家と懇意のある腰巾着というイメージが強い。時の政府の中でも後ろ暗いことを抱えている派閥に属する。
さゆりは、データの下の欄に推薦者の名前を見ると、鼻で笑う。
「あの男も耄碌したものね。この騒ぎの中、今までと同じやり方が通るとでも思ったのかしら。」
そこには”奥脇健二”とあった。
奥脇はさゆりの父だ。
「七海様…。」
長谷部は心配そうに呟いた。
さゆりという名は偽名、というより亡き姉の名前だ。
彼女の本名は、奥脇七海という。