第52章 審神者代理
さゆりの答えは、燭台切に少しの不快感を齎した。
間違ってはいない。
本来の正しい在り方だと燭台切も思う。
けれど、自分達がそれに当てはまるかと言われると、そうは思えない。
あれだけ決死の覚悟で訴えたにも関わらず、政府の取った行動は身勝手そのものだ、と燭台切は思う。
江藤を名代に立てたかと思えば、騙すようにレンを拘束し、密かに害した。レンが逸早く気づいて逃げたから事なきを得たが、そうでなければ到底許せることではない。
その政府の影がついて回るというのは、心情としては気分が悪いし、気持ちが悪い。
とてもじゃないが僅かにも信用できない。
燭台切は、自分を落ち着かせるように少し息を吐いて気持ちを整える。
「…質問を変えようか。
もし、政府から僕達を殺すように命じられたら君は従うかい?」
この質問なら、さゆりが自分達を、政府をどう思っているかが少しは分かるだろう。
「そんな命令を受けたことがあるの?」
さゆりは怪訝な様子を見せる。
そんな命令を堂々と出すなど聞いたことがない。
堕ちた刀剣の解刀ならまだしも、邪気すら感じられない刀剣の解刀など以ての外だ。
「最近、国会議事堂で刀剣が暴れたって話、聞いたことない?」
加州が口を挟む。
最も重要なレンのことが知れてしまったのなら、他の情報など隠していても、あまり意味がないと判じたのだ。
「ええ、知っているわ。」
「それ、俺達だから。」
さゆりはそれを聞いて呆気に取られる。
「呆れた。あの騒動、あなた達が起こしたの?」
「まぁね。それ最初の発案者はレンだよ。」
「僕達は、政府のやり方が気に入らなくて喧嘩売ったの。」
大和守も口を挟む。
「二代目、三代目の審神者のせいでだいぶ殺し合いもさせられたしな。」
「そうそう。かなり邪気が満ちてたんだぜ。それを浄化したのはレンだったんだ。」
薬研と厚も話に加わる。
「手入れもしてくれたんだぜ。軽症の奴も重傷の奴も、みんなレンが直してくれた。」
「しかし、それは政府にとっては目障りだったようです。」
太鼓鐘と鳴狐が加わわる。