第52章 審神者代理
「加州清光。私に従わない理由を言いなさい。」
「…あんた…。」
加州は悔しそうに顔を歪めながら必死で抗う。
「あら。あなた達がだんまりを決め込むからよ。これではやりようがないわ。」
さゆりが少し待っていると、加州の口元が動く。
どうやら抵抗しきれないらしい。
「…レンを…、返してほしい、から…。現代にいる、レン、を…、迎えに行きたい…。」
加州は抵抗出来ずに話してしまう。
「レンとは、誰?」
「俺達の、主。」
「主?」
さゆりは、彼の言動に矛盾を感じた。
審神者は彼等が望んで追い出したのではないのか。
さゆりが考えていると、前から大きなため息が聞こえる。
加州を見ると、彼は苦く仏頂面を浮かべながら、半眼でさゆりを見ている。
「ずるいよね。魂縛り使うなんてさ。
もうここまで言っちゃったなら言うけど、レンは政府が派遣した審神者じゃないからね。寧ろ政府に喧嘩を売った人だから。
俺達はレンじゃなきゃ、主とは認めない。だから従わない。手入れをしてほしければ、レンに治してもらう。それ以外は受け付けない。
これが俺達があんたを拒む理由。」
さゆりは、漸く得心が行く。
「その方、何故現代にいるの?」
この質問に彼等は互いの顔を見合わせる。
「その質問に答える前に聞きたいことがある。」
近くにいた燭台切が切り出した。
「君は誰の味方?政府?それとも僕達?」
「何?それ。」
さゆりは不可思議な顔をする。
審神者をやる以上、政府からの命令を受けるわけで。
政府から受ける任務があるから、生計が成り立つわけで。
言ってしまえば、政府があるからその恩恵を受けられる。
政府とは切っても切れない関係にあるものだ。
「敵も味方もないわ。審神者をやるのだから、時の政府の影はついて回るわ。でも、それは付喪神であるあなた達も同じでしょう?」