第52章 審神者代理
さゆりは、待てども待てども一向に来る気配のない刀剣に痺れを切らせて、呼びに戻る。
広間に来ると、遠征に行くよう指示した面々はちゃんと身支度をし終わっている。
にも関わらず転移門には来ない。
何故か。
「…拒絶しているの?」
その問いかけに刀剣達は一様に顔を背けてたまま答えない。
成程、と思う。
これが江藤とかいう男から報告があった、刀剣が命令に従わないということだろう。
さゆりは、注意深く彼等を見る。
審神者の指示が通らないということは、邪気が身の内を満たしているのだと思ったのだが、そういった様子は見られない。寧ろ、神気が満たされているようにも思える。
特に、鶴丸と大倶利伽羅は飛び抜けている。
やむなくやっている、というよりは、
罪悪感なくやっている、という印象を受ける。
「…何故、拒絶するの?これはあなた達の為になることでもあるのよ?」
遠征をすれば資材が貰える。
傷を負った時に手入れが出来るのだ。
「…どう、俺達の為になるのさ。」
加州が苦い顔で答えた。
加州からしてみたら、資材があったところで直してもらえなければ、そんなものいくらあったとしてもゴミ屑同然なのだ。
「今更ね。手入れの為に決まってるじゃない。」
さゆりが答えるも、加州はそっぽを向くばかりだ。
「ねぇ。あなた達は何がしたいの?」
これにも答える者はいない。
さゆりは大きくため息をついた。
これでは埒があかない。
さゆりは靴を脱いで広間に上がると、加州の前でぴたりと止まり、彼と目線を合わせるようにその場に座る。
加州は、少しずり下がりながら怪訝な表情を浮かべる。