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君に届くまで

第52章 審神者代理



「…いや。俺はそうは思わない。あの人間にはおそらく人を殺せない。殺す度胸がない、と言った方が正しいか。」

鶴丸は冷たい表情で淡々と言う。

「そうだな。あれに人は殺せない。」

大倶利伽羅も静かに言う。

「…2人は、魂縛りで殺気を向けられたんじゃないのかい?」

燭台切は不可解そうに尋ねた。

「そうだな。だが、その瞬間だけだ。あの人間には呪をいつでも解けるという慢心があったように思う。」

「俺も同じ印象だ。脅しの為にやった、ってところだろうな。」

鶴丸と大倶利伽羅は、その時のことを思い出しつつ言う。

「なら、一体誰が…?」

「審神者じゃないなら江藤って奴じゃないか?」

薬研の呟きに太鼓鐘が答える。

「だが、加州の脅しを受けてから、めっきり姿を見せなくなったよな。」

「あのボディガードみたいな奴等じゃないの?強そうだったじゃん。」

厚と乱が太鼓鐘の推理に首を捻る。

「僕、思うんですが。あの審神者様は、江藤って人の縁者だったのではないでしょうか?」

五虎退がおずおずと切り出す。

「加州さんが言っていた”江藤は審神者の何?”って問いを考えてみた時に、こんのすけの言葉を思い出したんです。」

「そうか。政府の血縁者ってだけでコネで配属になるって言ってたな。」

厚の言葉に五虎退は黙って頷く。

「だから、僕達の命令回避をあれ程に怒ったのではないかと思ったんです。」

「そうなると、江藤に動機が出て来るぞ。」

五虎退の推理に、薬研が江藤を訝しみはじめる。

「あの人間は、鶴丸から脅しを受けて家に逃げ帰る。
すると江藤に連絡が行く。
江藤はレンを殺してあの人間を本当の審神者にしようと考えた。
だが、分身だったから撃った瞬間消えちまって、偽物だったことに気づいた。
で、今慌てて捜索中。ってとこか?」

太鼓鐘が纏め、ニっと笑う。

「その説、ありだね。」

大和守もニっと笑う。

「だね。あとは俺達だけで現代に行く方法を探さないと。」

加州が次の行動を示唆すると、彼等は揃って頷いた。
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