第52章 審神者代理
「そうだ!レンは!?」
鶴丸は不意に思い出し、きょろきょろと辺りを見回す。
あの夜の記憶を手繰り寄せ、間取りを今と当て嵌める。
リビングの向こう。
階段の下辺り。
鶴丸は半地下になっている書斎部屋に入り、唯一のドアのレバーを下げる。
カチャリと音がして、簡単に開いた。
鍵が掛かっていないようだ。
鶴丸はドアを全開にして中を伺うが、暗くてよく見えない。
ドアの横のスイッチを確かめる。
一番上を押してみると、ブンと音がして目の前に電気の網が一瞬で張られた。
鶴丸は眉を顰めながら、スイッチを戻し電気の網を消した。
真ん中のスイッチを押してみると、ぱっと一瞬にして天井の明かりが灯る。
手前の階段を下に降りていくと、ぼんやりと灯るランタンが点灯したまま転がっている。
壁の端に目を向けると、乾パンと水が封を切った物とそうでない物に分かれて綺麗に並べられていた。
そして、微かに残る神気は確かにレンのもの。
鶴丸は、不快感を露わに顔を顰めた。
レンがここにいたことは間違いない。
「ねぇ。…これって、銃弾じゃない?」
ランタンの側にしゃがんでいる加州が、指先で摘んだ物を見て言った。
その言葉を聞いて、刀剣達は加州の周りに集まる。
「…ほんとだ。ちょっと見せてくれ。」
厚が手の平に乗せると、円錐形の金属が部屋の明かりを受けて鈍い光を放つ。
「誰かがレンを撃った、ってことだよね。」
大和守が腕を組み口元に手を添え、難しい顔をして考える。
「そうなるかな。でも、誰が?」
燭台切も腕を組んで考える。
「俺は、あの審神者だと思う。」
加州は審神者のこれまでを思い出しながら言った。
鶴丸と大倶利伽羅に殺し合いを命じたくらいだ。魂縛りを破られた腹いせに閉じ込めたレンを殺しかねない、と考えた。