第51章 反撃
ふらりふらりと、江藤は転移装置を目指す。
その手にはサイレント付きの黒い銃が握られていた。
江藤が行き着いた思考の先は、レンだった。
ーあの女さえいなければ…。
レンを殺したところで管狐がいなければ、なんて思考も。
あの刀剣達に魂縛りの呪が効かない、なんて思考も。
遥か彼方に飛ばしてしまっている。
ー全ての元凶さえ葬ってしまえば…。
江藤の頭にはそれしか思い浮かばない。
五稜郭は宵闇の静けさに包まれて、何の音もしない。
無人の転移装置に自身の霊気を流すと、瞬く間に景色は変わり、虫の合唱が鳴り響く本丸へと辿り着く。
江藤はまるで亡霊のように、ふらりふらりと審神者の住居棟へと歩いていく。
時間が時間だけに、彼を見咎めるものは誰もいない。
明かりの落とされた住居棟の玄関のドアを引くと、鍵もかかっておらず簡単に開いた。
江藤はゆっくりと中に入っていく。
向かう先は地下室だ。
江藤はリビングの明かりを付け、地下入り口の電撃フェンスのスイッチを切った。
次いで、掛かっていた鍵をカチャリと開けると、ドアを押し開く。
「漸くお出ましですか。」
レンは胡座をかいて、江藤を迎える。
だが江藤は何も答えず、銃の照準をレンに合わせた。
「ふ〜ん。それがお前の目的か。」
レンがそう言った瞬間、ピュンと音がして彼女の額に穴が開いた。
レンはそのまま後ろに倒れ、ボンと音を立てて跡形もなく消えてしまう。
「……!!」
江藤は驚きで声が出なかった。
この時、初めてレンが身代わり人形だということに気づく。
ー初めから…、何もかも成功していなかったのか…。
江藤は銃を取り落とすと、力なくその場に座り込んだ。