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君に届くまで

第51章 反撃



乱が鶴丸を探すと、彼は木の上で日向ぼっこをしていた。

「鶴丸さ〜ん。あの人呼んでたよ。連れてこいって命令なんだよね。」

乱は木の上に向かって鶴丸を呼ぶ。

「また癇癪を起こしていたのか。」

彼はむくりと起き上がり、体を起こして軽く伸びをする。
そして、するすると降りると服についた木の屑をパンパンと払い落とす。

「さて。じゃ、のんびり行きますかね。」

鶴丸はそう言って乱を促した。

「たまにはさ、本丸の外を散歩したいよね。」

乱は塀の向こう側を見ながら頬を膨らます。

「まぁな。だがまぁ、なるようになるさ。」

「けど、あの人も粘るよね。これだけ魂縛りが効かないなら逃げ出してもよさそうなのに。
泣きそうになりながらも噛み付いてくるんだよね。」

乱はげんなりしながら言った。

女の命令は、遠征や出陣に始まり、極々単純なものが多い。
書類仕事を手伝えだの、疲れたから肩を揉めだの、休憩に楽しい話をしろだの。
その度に、書類を破いてみたり落書きしてみたり。肩のマッサージには痛いくらい揉んでみたり。楽しい話には鈴虫やコオロギのエグい話をしてみたり。

最早、命令回避というよりただの嫌がらせになりつつある。
やっている方としてもあまり気分がよろしくない。
だが、魂縛りの呪を使って命令してくる以上は、こちらも歩み寄りたくはない。

「そうだな、俺も飽きてきたな。そろそろ決定打を出してくれるとありがたいんだが。」

鶴丸もここ数日を思い出してはげんなりする。

「そうすればボク達も心置きなく徹底抗戦が出来るのにね。」

乱は眉尻を下げて、はぁ、と大きくため息をつく。

「どの人間も似たり寄ったりだからな。そう待たずに餌に食いついてくれるさ。」

鶴丸は苦笑しながら乱の頭を、ぽんぽんと軽く叩いた。
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